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岸田劉生「道路と土手と塀」
伊坂幸太郎「重力ピエロ」を読み終えた。
― 染色体であるとか、遺伝子であるとか、血の繋がりであるとか、そういったものを、父は軽々と飛び越えてしまった。私にはそう思えたのだ ―
震えた。
全てはこのラストの、父と兄弟の会話のシーンのためにあったのではないかとさえ思った。
常識的、科学的といわれているものを、たとえ気休めだと言われようが、蹴散らした瞬間のカタルシスはすざまじい。
逆に言うと、こういう瞬間を体験するために僕は論理的であろうとするし、知識を蓄える。
重力は絶対だと信頼しきっているからこそ、重力を忘れさせてくれるピエロに感動できるのだ。
重力を消すことなんてできないけれど、ほんの一瞬だけ、重力を忘れさせることだったらできる。そして、そんな気休めにこそ、人は救われる。
伊坂幸太郎のメッセージは他の作品でも一貫している。
また、この小説では、「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」という言葉が繰り返されるが、これもまた、伊坂幸太郎の一貫したスタンスだ。
そのため、伊坂作品では、深刻な要素を、暗くなることなく受け止められる。そしてスッと心に入ってくる。
それは不思議な感覚で、そしてとても心地いい。
うーむ。
どんどん伊坂幸太郎にハマッてきてる。
一人の作家を追いかけて、物語がその作家のどのような考えや意識から生まれてくるのか、ということまで知りたい。
だから僕は、伊坂幸太郎を貪り読み尽くしてやる。
(ストーカーの夏子みたいに)
一方で、いろいろな作家の本を読んで、多様な価値観の波に身を投じたい。
とにかく今、読書をしたい。
伊坂幸太郎が雑誌のインタビューで、
「僕の小説って荒唐無稽だけど社会に接続しているつもりで書いています。真面目なことを真面目に伝えるのはフィクションの役割じゃないんで、荒唐無稽なもので覆って伝えたい」
と語っていた。
やはり、彼が小説を書く上で「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだ」というのが信条としてあるみたいだ。