科学隊

ささやかな科学と哲学のバトンを渡すための情報交換の場所です。

【転記】原発に関する議論

mixiからきいちさんのコメントを転記。

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あまり話が伝わっていないようなので、もう一度失礼します。

>この日記は

>あの論文がおかしいかどうかの話じゃないですよ。

>目的は原子力をやめても他の電力で補えるかどうかです。

えぇ、存じてます。そもそも猫王さんの日記から読んでおりますし。

>そもそも原発は単騎の発電量は多いですが、

>全体に占める割合は3割弱で、現在も火力などの発電設備が

>主力を占めているんですね。

その下のリンクは、PCが不調で読めませんでした。読んでませんが、

おそらくいろいろなところに書いてある、

火力7割、原子力3割、その他微量

という、空気の組成のような話だと思いますが、それは存じてます。

>ですから、原発をやめようと思ったら

>この3割を他の発電設備で補えば良いのです。

それも承知です。

そのうえで、その代替エネルギーを、もりびとさんが

原子力を除く発電方法としては風力・地熱。太陽光がある

>特に風発電は九州大学がフロート施設を

>開発したことにより、低周波音の問題も解決しそうな感じがする。

>そして風力発電をそのフロート施設で作れば(東京都の海上

>東京都内の電力は賄えるという計算結果が出ている。(東京大学から)

>充分補助電力として使えそうな感じデス。

とおっしゃってますから、それは違うんじゃないの、ということを申し上げているのです。

1600基も日本国内にあって、「定格出力」が2200MW。

効率は最高で59%だそうなので、発電量が、最大で約1300MW。1600基作ってもこれです。

実際は「稼働率」(運転中の基数/全数)は100%なわけはありませんからもっと下がります。

またランニングコストは膨大です。このデメリットは非常に大きいです。

私は、他社や海外のデータから、「充分補助電力として使」うには、常識の範囲外の数が必要だと申し上げました。

私のスタンスですが、現状を変えようとするならば、変える側が、変えることのできる、実現可能性を、根拠立てて示す必要があると考えてます。

もちろん、我々は専門家ではないですから、100%完全なものなど、作るのは不可能ですし、それが仕事ではありませんから、やる意味もありません。

私自身、原発に少し携わる仕事をしており、恐ろしさは重々承知しております。

また「CO2のランニング排出量がない」という甘言に騙されて、乱立していることにも恐怖心があります。

しかし、「原発をなくそう」という人の、

「他の発電所(特に火力)の稼働率を上げる、代替エネルギーで賄う」

という発言が、数値的に、機械的に信じられないのです。

まず、火力ですが、上で書いてるとおりなので端折りますが、

そもそも前提でない数値まで上げて、弊害は気にしないのですか、ということ。

もちろん、専門家にしかわかりませんよ。ただ、私は寿命を制限する部品を開発してますが、見込みとして「現状」難しい、と思ってます。

代替エネルギーに関しても、上で数値を出してますが、

原発の17000MWを、たかだか1基2MWしかないものでどうやって賄うつもりなのか、信じられないのです。

「補助的に」とは言いますが、補助にもならないですよ。

しかも安定供給できない代物ばかりですし。

今後に向けて、開発を進めていくことは大変重要ですし、私も大賛成です。

しかし、私はどう見積もっても、数10年単位で、原発の発電量を「補助的に」賄うほど、火力以外のエネルギーによる発電は成熟しないと思ってます。

火力にしても、「いつか」という表現がまずかったです。

昔は、油田まで届かなかっただけ、という状態なので、掘削能力の向上で「確認埋蔵量」が都度増加しました。

今は枯渇状態から絞り出す技術まで到達しています。

当たり前ですが、絞り出した状態ではもう油は出ません。

現在の技術は、油田の限界まできているんです。

他に「確認埋蔵量」を増やすには、新しい油田を探すしかありません。

しかし、そんなことをあてにはできないのです。

発電効率を上げるなど、いろいろな試みをしていますが、

火力用燃料の埋蔵量は、確実に底をつきはじめています。

それを、より重きを置くことを推奨することは、私には非科学的すぎてできません。

ちなみに「貧弱だった」初期の原発は、50年前で160MW/基の「発電量」でした。

伸び代なども風力、地熱等とは違いますし、同系列で語られても・・・

あと、原発も、ものすごく大きなデメリットがありますが、

他の発電所もそれぞれたくさんデメリットがあるんですよ。

それらを考慮して、初めて「脱原発」という理論になるのではないでしょうか。

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原子力発電所稼働率だけを上げるために

>火力発電所のほとんどを停止させているそうだw

こう言いきることは難しいです。

原子力発電所は、その特性から、一度起動したらなかなか停止できません。

昼夜、連続運転を繰り返します。

ですから、その冷却系統は、その要求に見合ったものが納められています。

火力発電所は、停止のしやすさから、基本的にDSS(Daily Start-Stop)で、

日々起動停止を行えます。実際、冷却系統はその要求に見合ったものが納められています。

DSSが可能ですから、夜間停止、昼間起動、という使い方をします。1日の半分使うかどうか、というところでしょう。

原発は、数か月、数年稼働しっぱなしです。

この両者を比較したら、原発稼働率が高いのは当たり前、ということになります。

原発の有効性を証明するために火力を停止しているのではなく、原発が止められないから、火力を適宜利用しているのが実態です。

逆に、常時運用を目的としていない設計なので、火力の稼働率を不必要に上げたら、壊れます。

稼働率が低いから上げろ」というのは、素人考えです。

それにまつわるタービンやポンプの軸受は、高い稼働率に耐えうる設計ではありませんから。

DSSの思想がある限り、1台のタービン、ポンプの稼働率が50%前後、というのが限界です。

ましてや猫王さんのおっしゃるように、定期点検がしょっちゅうありますから、

稼働率は低くなって仕方がないのです。

それを変えろ、というのなら、そういう製品を作らないといけません。

また、水力の「4千」という解釈は非常に危険です。

自然のエネルギーを利用した発電に際し、「定格出力」という数値を出します。

これは「発電量」とは似て非なるもので、取得エネルギーが規定値だったときに、出力が○○になる、というものです。

水力も、太陽光も、風力も、規定値通りに出力する時期など、年間でほとんどありません。

「設備利用率」などというのは嘘っぱちです。(火力、原子力に関しては正しいです)

自然エネルギーに対しては、あくまで、

(発電量)/(定格出力での計算値)

です。水力が23%しか稼働させていなかったわけではなく、稼働していたけど23%しか発電できなかった、がより実際的です。

ですから、水力が4000となるには、年間を通して定常的に水流を発生させなければなりませんが、それは不可能です。

太陽光などもしかりです。

かのリンクの京都大学の原子炉実験所は、

ちょっと、原子力目線で全てを語っているような気がします。

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そして私が上で指摘しているのが、

「火力は70%も稼働する設計になっていない」ということです。

「休止させられている」のではなく「休止させる設計」なんです。

実は、今、この火力と原子力用機材の、消耗性パーツの開発をしているんです。

そこで、調べた内容なんですね。

現状の設計では、70%も運転できませんし、したら壊れます。

壊れたら、言わずもがな、0%ですよね。

先日のハイパーレスキュー隊のポンプ車と同様です。

7hと決められた時間に対し、12時間も使えば壊れますよ。

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続いてmixiから猫王さんのコメントを転記。

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>水力も、太陽光も、風力も、規定値通りに出力する時期など、年間でほとんどありません。

これは肝心な事ですから

あらためてお返事しときますと

それはその通りです

しかし、それをもってして

原発が必要という論理があるじゃないですか

それは「論理の飛躍」だと、私はいつも批判しております

再生可能エネルギーを利用し

今後、ますます発展させていって

足りない分は、火力で利用すればいいのです

それで電力が賄えないとなり

他に代用エネルギーがないとなって

あとは原発だけとなったとき

はじめて原発が必要になるのです

原発は、今の技術のままでは大変危険です

わざわざ選択するものではありません

特に日本は地震国ですから、原発に適さない国と言えるでしょう

再生可能エネルギーの不安定さをもって

原発を」と主張する論理は

(きいちさんがそう言ってるわけじゃなく、そういう論理があるということです)

飛躍した主張です

そこに安易に期待してはいけないし

私は今のところ、計算に入れてないですけど

省エネ技術も、どんどん向上するんじゃないですかね?

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きいちさんのコメントを転記。

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ちょっと話は逸れますが、今もりびとさんのところでも同じような議論をさせて頂いてます。

猫王さんともりびとさんはほぼ一緒の立ち位置でしょうが、

私は若干違います。

その同じ点と違う点を一度猫王さんと一緒に整理したいと思いました。

(でないと、私が筋違いのことを主張しているかもしれませんので笑)

共通点

1、原発は危険である

2、原発を増やしてはならない

3、代替エネルギーの開発・効率向上が必須である

相違点

猫王さんたち

1、原発を撤廃すべき

2、代替エネルギー(火力、他クリーンエナジー)で十分賄える

きいち

1、撤廃は難しい

2、代替エネルギーでは「現状」充分賄えない可能性が高い

おおまかに言ってこんな感じでよろしいでしょうか。

原発がなくても計画停電不要、という猫王さんの根拠としては、以前原発が全停止したときにも計画停電が不要だった、というところですが、

私は、その期間と、その当時の販売電力量がいくらだったのか、そのときの火力の稼働率はいくつだったのかが不明だから、その結論は危うい、と思ってます。

ましてや4月といういちばん電力量の少ないときに乗り越えたからと言って、8月をのりこえられるとは言い切れませんから・・・

平時で5割弱の火力を、その当時7割稼働させて、ピーク時の8割の電力量をまかなうことができました。期間は1週間でした。

もしこういう結果でしたら、ピーク時は火力の稼働率は100%前後でしょうから。

そんなことは不可能です。

また、1週間ならまだしも、数か月稼働率を7割にするのは危険ですし。

調べた限り、この点の詳しいデータが見当たらないので、憶測でしか言えません。

どちらが正しいかは私にはわかりませんが、

需要が供給を上回る可能性がある限り、技術屋としては安全側に見る方を支持します。

首都圏の大停電なんて起きたら、経済的にも都市生活的にも壊滅的被害を受けますからね・・・

また、補助的にクリーンエネルギーの話もされてますが、

あれは「原発の代替の補助」にはなりえないほど、小さな値で、しかも不安定なものです。

詳しくは控えますが、あくまで「電力総消費量の補助」です。

この考えは否定しませんし、むしろ共感してますが、「原発の代替の補助」を目的とするには無理があります。

原発をゼロにするために必要なこととして、私が考える方策は以下です。

1、火力の効率向上(稼働率、ではなく)

2、代替エネルギーの開発・発電量向上

3、節電型電化製品の開発・拡販

4、人々が不便を許容する

5、電気代の値上がりに耐える

6、蓄電技術の開発

7、火力発電用燃料の枯渇に備える

これらをもってしても火力依存は避けられず、

火力用燃料の枯渇は将来的には必ず避けられません。

それが、私の代か、私の子の代かはわかりませんが、そう遠くないと私は見てます。

そうなったときの被害は、正直言って原発の被害を上回ると考えます。

あまり時間はないと思うんですね。

だから、私は原発の「撤廃」には懐疑的なのです。

「縮小」にはやや同意、「現状維持」にもやや同意、といった位置にいます。「拡大」には反対ですが・・・

最後に、

再生可能エネルギーを利用し

>今後、ますます発展させていって

>足りない分は、火力で利用すればいいのです

>それで電力が賄えないとなり

>他に代用エネルギーがないとなって

>あとは原発だけとなったとき

>はじめて原発が必要になるのです

大賛成で、私は今がこの地点だと思ってます。

そして、火力でだましだましやったとして、枯渇したときには、

すでに原発の設置は間に合いません。

だから、原発を少数ながらやり続けることに意義があると思ってます。

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猫王さんのコメントを転記。

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原発がなくても計画停電不要、という猫王さんの根拠としては、以前原発が全停止したとき・・・

これは根拠にしているんじゃなくて

実証例として紹介しているのです

小出先生の計算など、理論値では十分に賄えるわけですが

電力会社が情報を開示しないままでは

そういう理論上の話にすぎませんが

実際に、賄えたという話です

IAEAも、報道を紹介しておりますが

原発なくても賄えると言ってます

んで!

原発がなくてもやっていけるかどうか

これはやっぱり、電力会社が情報開示しない以上

あくまでも理論の話に終始しちゃうんです

・理論上で賄えるということ

・現に賄えた過去があること

IAEAの話

こういうことから、原発がなくても賄えると推論は通ります

(推論が通るという表現は、論理学からしたらちょっと変ですけどね

意味的にご理解ください)

んで、これにプラスして

風力発電で、かなりの電力需要がまかなえるという研究もあります

それが本当かどうかは、私には判断できませんけどね

原発擁護論は、まずは賄えるという理論を反証しないといけないけど

なにをふどう反証しようが

情報開示がないままでは、想像にすぎないんです

だから反論としては、成立しません

再生可能エネルギー

現時点では不十分です

原発に比べて、お金のかけかたも違うのでしょう

これは憶測ですけど、恐らく調べればその通りでしょう

風力や太陽光発電の拡充によって

大きく電力需要が賄えることから

(不安定さは火力でカバーできます)

現状がどうであれ

もし仮に、原発でピーク時の電力需要がまかなえなかったとしても

供給不足を、「イコールで原発必要」とはなりません

あまりにも、原発は危険すぎますので

地震国日本には、適しませんし

コストもかかります

他に利用できるエネルギーがないなら

例えば、火力と原子力しかないのであれば

そのときに俎上に載ってくる話です

他のエネルギー利用より

原発を優先させている現状が

恣意的だと批判せざるをえません

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