開教授
今日はゼミで開教授の講義をきいた。
まず、物凄い濃密な90分だった。この人はすげえ。話を整理するための休憩が欲しくてたまらなかった。
そして興味を引かれて楽しかったのと同時に集中しすぎて疲れ果てた。
とりあえずは自分の意見よりも今日の話でひっかかった事を書きなぐる。
まず化学者という視点から生物について語ってくれた。
何故我々人間のような複雑な有機物が生まれたのか。
我々生物は複雑に秩序立って出来ている。
しかし自然界では放っておくとエントロピーが増大する方向にいく。生物が生まれるのは不可能ではないか。
しかし、エントロピーが増大するというのは大局的に見てであり、局所的に見ればエントロピーが減少する、つまり秩序ができるのはありうる話であるのだ。
例えば水が入った桶を持ち上げて底に穴を開ける。すると水が流れ落ち、渦(秩序)ができる。
生物が生まれる条件とは、大まかに言うとまずは、エネルギーを持っている物(さっきの例えでいうと持ち上げた桶の中の水、位置エネルギーを持っている)が存在していて、そのエネルギーが動ける状態にある(穴を開ける)ということである。
そして次に水が存在するということである。
水素結合は弱い結合の中で唯一空間異方性があるので(簡単に言うと結合する位置、または角度を限定する)、これによって有機物が立体構造を持って、遺伝物質を作ることができる。
難しくて、これだけでは生物が生まれたのを納得できるわけないけど、暗闇の中に少しだけ光が射したような気持だ。
また、講義が終わった後にもっと話を聞きに行ったらこんな話も聞かせてくれた。
タンパク質ができた時から今までの時間を1年に置き換えると、猿から人間に進化したのなんて大晦日の11時40分頃からの短い時間で、最初の単細胞生物が出来るまでの時間は半年もかかっている。
時間だけで言うと、最初の単細胞が出来たことと、そこから人間が出来たのことは同じくらい難しい。
だからまず初単細胞までを考える。
実際にはその時間は15億年くらいであり、それくらいの時間があれば、秩序が出来る方向の化学反応が起こりまくって細胞ができても不思議ではない。
うーむ、、、ちょっとだけ、ちょっとだけだけど不思議じゃなくなったぞコノヤロー!!
次に医学者という視点から現代の医学と再生学について語ってくれた。
一昔前までの病気の原因は外部にあった。ウイルスや細菌である。
しかし結核などの病はペニシリンなどの抗生物質の登場によって制圧された。
ペニシリンは、人間の細胞にはなくて結核菌にだけある細胞壁が作られるのを阻害することによって結核菌を殺す。
しかし、現代の病気と言われるものは原因が自分自身の内部にある。糖尿病や心臓病、ガンなどである。
ガンって一体何だって言うと、とにかく増えまくる細胞だ。制御がきかない。
必要ないの増えまくるから邪魔で身体にとって危険だ。
だけど、結核のようにやっつけろって言ってもそうはいかない。
ガンはついこの間まで自分だったヤツだ。同じ釜の飯を食ったヤツだ。技は見切られてる。
そのためガン細胞だけ殺す薬を作るのは至難の業だ。
現在、抗ガン剤にはどのような指示が与えられているかと言うと、
「増えまくる奴を殺せ。」
だ。
これが現代医学の限界。だから抗ガン剤で髪が抜ける。
髪は伸びるからね、攻撃されるんだ。抗ガン剤に。
現代社会というのは特殊な社会で生命のバトンを渡し終えた40歳以上の人たちが普通に生きている。
だからその人たちの病気として、原因が内部にある病気が出てきたのだ。
そして再生医学のルーツについても語ってくれた。
再生ってのは実は昔から行われてきている。
例えば義足。足の機能を「体重を支える」ということだけに限定した場合、義足によってその機能は再生できたことになる。
入れ歯もそうだし、カツラもそうだ。
とまあこのように、臓器レベル、目鼻口足手髪レベルの再生は昔から行われてきている。
しかし現在の再生学は違う。
複雑な機械と我々複雑な生物の違うところは、我々生物は設計図を内部にもっているという点である。
機械は外に設計図(人間が持ってる)がある、だから自己再生できない。
しかし生物は1つ1つの細胞にDNAがあって全体の設計図がある、だから自己再生が可能である。
現在再生医学とは細胞に書いてある設計図をもう一度分析し、細胞レベルでの再生を目指しているという点で新しい挑戦である。
このオッサン、話がめちゃくちゃ上手い。
僕も将来、研究内容や興味を持ったことを人に話すとき、聞き手を見事に引き付けるような話がしたいもんだ。
そして最後に話を聞きに行った時、衝撃的なことを言っていた。
「人間は絶滅するからさぁ。」
えええ!?さらっとそういうこといきなり言われても!
「長いスパンで見てだよ。」
これについてくわしく聞かなかったから残念だったな。
でもあのオッサン(なんか「教授」から「オッサン」になってきたけどいいや)のことだからしっかりした根拠があるのだろう。
現代社会は老人が多いという、今までの生物史に例がない社会であるのだけれど、多い老人を上手く使えてないという。(言い方悪い笑)
僕が、「退職する年齢を上げたらよくないですか?」って訊いたけど、そうはいかないらしい。
やっぱり体力と脳力は年齢とともに落ちるから。
このオッサンは骨の再生の研究をしているのだけど、それは目の前の患者を治したいってこと以外にも、老人を上手く使えないかということを考えて研究しているらしい。
運動能力が落ちてずっとベットの上で生活していると、脳の働きも低下するんだそうで、老人の運動能力を上げ、老人を上手く使える社会を目指す。
僕が特にこの人の話にききいってしまった理由は、研究テーマが面白いこと以外に、この人の哲学的深度が深いからであろう。
1つボールを投げると10個のボールを投げ返してくれるサービス精神も好きだ。
ニンジンとじゃがいもを投げるとクリームシチューにして返してくれる感じだ。
僕はこれからこの人の方向に高性能アンテナを伸ばすことにした。
最後にこの人の名言を
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「サイエンスZEROに出て良かったのは安さん(安めぐみ)に会えたことだよ」
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……
………
…気をとりなおして、
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「細胞は最初(受精卵の時)は何にでもなれる。これを幹細胞と呼ぶ。でもどんどん分化していくうちに、いろんな細胞になれる可能性を捨てて、最後には1つの役割を持ち、体を作っていくんだ。
これは人生と同じだ。
君達大学1年生は幹細胞みたいなもんだ。
無限の可能性を秘めている。
でも同時にまだ、『何もしていない』んだ。
君たちはじっくりと考え、将来の道を選択して下さい。」
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かっけぇ…